産業用ドローンがさまざまなシーンで活躍するようになり、その優位性がすっかり認知されてきた昨今、特に注目されているのが、人が近づけない場所にある設備の点検におけるドローンの活用でしょう。

人が容易に行けない場所でも安全かつ効率的にたどり着けてしまうというドローン最大のメリットを活かし、橋脚や鉄塔などさまざまな設備の点検をドローンでおこなうことができるようになってきました。

そんなドローンを使った点検ですが、何も点検箇所は屋外にある大きな設備だけとは限りません。屋内にも、人が簡単には近づけない施設や設備が多くあり、その点検は必須なものとなっています。ここでもドローンの活躍できるシーンが存在するわけです。

今回は7月末に開催された国際ドローン展において屋内設備のドローン点検分野で最先端を行くブルーイノベーション「ELIOS3」を直接見る機会を得たので、そちらも参考にしながら、屋内点検ドローンの盛り上がりについて見ていきたいと思います。

①ブルーイノベーション「ELIOS3」とは?

今回紹介するブルーイノベーションの「ELIOS3」は、ドローンやロボットを使った点検や物流のソリューション開発を手掛けるブルーイノベーション株式会社が開発した屋内点検ドローンです。

UT検査ペイロードを装着したブルーイノベーション「ELIOS3」

「ELIOS3」は、従来の機体各部をさらに改善し、屋内点検ドローンの最先端として注目を集めています。

この機体は高い情報収集能力と安定飛行能力を備え、さらに用途に応じてさまざまな機能を使い分けることで、多くのシーンに対応。この機体ひとつで施設や設備をまるっとデータ化させることができます。

機体の特徴としては、人が立ち入ることができない場所にアクセスする機体ということで、他のドローン以上に特化した機能が備えられています。

カメラは上下に180度チルトが可能な構造となっている。

特に点検に特化しているため、撮影機能は非常に重要です。この「ELIOS3」では、4KもしくはFHDによる動画撮影と1200万画素での静止画の撮影が可能で、さらにカメラは下向きだけでなく、上向きにも上下180度チルトさせることができます。これにより天井や機体上部にある設備の点検も可能です。

さらに、狭く暗い場所でも点検が可能なことも見逃せません。狭小空間で施設や設備に接触して機体が傾いても機体がモーターを回転させることで姿勢を維持する機能が搭載されていたり、機体周囲を覆う球体ガードによって物理的接触を避けることができます。また、16,000ルーメンを誇る照明を搭載し、完全な暗闇でも点検業務をしっかりとおこなうことができます。さらに、機体がIP44相当に設計されており、水しぶきや粉塵があっても難なく飛行を続けることができます(IP規格の認証は未取得)。

②「ELIOS3」が活躍するシーンとは!?

狭い囲みの中を非常に安定して上昇し、壁に向かってブローブアームとブローブヘッドで超音波厚さ測定をする「ELIOS3」。

そんな「ELIOS3」ですが、どういったシーンで活躍するのでしょうか?ブルーイノベーションでは、「ELIOS3」の対象点検施設例として、ボイラー、溶鉱炉、除塵機、燃焼室、煙道、煙突内壁、上下水道、ダクト、埋没配管、タンク、橋梁、地下ピット、天井クレーン、大口径配管、天井梁、地下洞道、鉱山立杭などが挙げられています。どれも人間が近づきがたい、もしくは危険を伴うような場所ばかりで、「ELIOS3」の優位性がわかります。こういった場所において「ELIOS3」は、安全性、効率性の面でアドバンテージがあり、コスト削減をおこないながら高い能力で施設や設備をデータ化することができるのです。

このようなシーンで活躍が期待される「ELIOS3」ですが、そのために必要な機能を備えているからこそ、屋内点検ドローンとして高い評価を得ていることになります。

まず、屋内だけにGPSが使えないことがほとんどですが、そのためにSLAM技術によって非常に安定した飛行を実現しています。また、LiDARが飛行中常に点群マップを作成しているため、操縦者はリアルタイムに機体の位置を把握することができます。さらに撮影するだけでなく、点群情報と撮影映像により点検対象の3Dモデルを見ながら状態を確認できるのと同時に、座標情報によって発生してしまっている不具合情報の位置の特定も可能です。そして、点群処理ソフトを使って測量レベルの点群データを作成できるなど、すべてがこの1機でカバーできてしまう万能性も持ち合わせています。

③機体ラインナップとオプションプラン

この「ELOS3」は機体購入プランと点検委託プランがあります。自社で飛ばすことができ、その回数も多いようであれば機体購入が良いでしょう。一方で、ピンポイントで点検をおこなったり、申請など飛行に際しおこなわなければいけない処理まで受け持ってくれるのが点検委託プランです。自身の状況に応じて適切なプランを申し込みたい。

また、ブルーイノベーションでは講習会や操縦技術研修、メンテナンス、会員制のサポートサービスも充実している。安心して「ELIOS3」を飛ばす環境を整えることができるでしょう。

さらに、利用シーンに応じてオプションのペイロードも3種類用意されています。具体的には安全な超音波測定を実現した「UT検査ペイロード」、センチメートル単位の正確なスキャンを安全に実施する「測量ペイロード」、被ばくリスクから作業員を守るため遠隔操作で放射線量を測定する「RADペイロード」が用意されているため、必要に応じてこういったオプションを活用するのも可能です。

④まとめ

今回は産業用ドローンの中でも大きな盛り上がりを見せている屋内点検ドローンを代表して、ブルーイノベーションの「ELIOS3」を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

人間が近づけない場所へ向かい、データを取得することができる「ELIOS3」は、効率性、安全性に優れた屋内点検ドローンです。今後「ELIOS3」の活躍するシーンはますます増えていくはずで、各地の見えない場所でこの機体がどんどん飛行していくことでしょう。

※取材協力:ブルーイノベーション株式会社

■ブルーイノベーション「ELIOS3」Webサイト
https://www.blue-i.co.jp/elios3/